『運命の7秒』は凄く見ごたえがあった。
娯楽性重視のいわゆる犯罪捜査ドラマとは一線を画しており、アメリカ社会で起きている現実を見据えた重厚な社会派作品だった。
15歳の黒人少年がひき逃げされ死亡する事件が起きて、様々な関係者に影響を及ぼしていく。
少年の両親、加害者の白人刑事、事件を隠蔽する警察、事件を捜査する女性検事と刑事を中心にして話は展開する。
この作品は観てるのが辛かったです。
良く頑張って全エピソード観れたなと自分を褒めたいw
観れば観るほど辛くなるストーリーには心が折れそうになったし、登場人物も不幸すぎるし、最後もまるで救いがない。
もちろん誰もが知っているが、善が報われ、悪が裁かれるなんてのはしょせん夢物語でしかないのだ。
『運命の7秒』は、人々の夢や希望が粉々になる話だ。
現実の過酷さ、無慈悲さが骨の髄にまで響いてくるリアリティが圧巻だった。
白人社会である警察組織は権力と法によって守られ、マイノリティや貧しく恵まれない弱者は蔑ろにされ、そこに救済などあり得ないという社会構造。
「人種」という永遠の呪縛から逃れられないアメリカならではの切実さ。
今のアメリカをこれ以上ないほどキレイ事なしで映し出していて、震えるほどの説得力で迫ってくる力強さがあった。
作品の舞台はニュージャージー。
自由の女神が背を向けるこの土地はニューヨークに近いようで、とても遠く感じさせる。
どこか社会から無視され、見捨てられたような寂しさ、空しさが漂う。
作品の構成を冷静に見渡すと、どこかトランプ政権批判のプロパガンダのようにも感じるが、実際の社会も作品が描いている社会とあまり変わらない気がする。
だからこそ怖いし、ゾッとするし、アメリカは呪われているなと本気で思う。
「こんな酷い社会でいいの?」と訴えている作り手の気持ちを、オレは積極的に汲み取りたい。
企画・製作総指揮はヴィーナ・サドさんで、時々脚本も書いている。
この人は、はっきり言って群像ドラマを作るのが巧すぎる。
あらゆる登場人物が重要な主人公であり、全員にリアルな人生を感じてしまう。
被害者も加害者も良くも悪くも人間的で、弱く、愚かで、犯罪に手を染めてしまう者でさえそこに生まれる葛藤や苦悩に共感してしまう。
善悪という単純な尺度では計り知れない人間の複雑さがしっかりと描きこまれていた。
登場人物の表現同様にリアルなのは、この作品において何かが明白になることがないこと。
「死」を覆せないという悲惨な真実のみが、この作品では明らかだったかもしれない。
「死」に対して人間はあまりにも無力すぎる。
そんな絶望や哀しみが、ヴィーナ・サドさんの前作『ザ・キリング』同様今回も作品全体を覆っていた。
それでも残された者たちは生きなければならないのだと思った。
悲痛な物語だったが、間違いなく傑作。
ちなみにキャストでいうと、みんな名演技すぎて圧倒されたんだけど、特に血も涙もない悪魔みたいな弁護士役を演じるグレッチェン・モルが最高w
グレッチェン・モルは久しぶりに見たんですが、もはや熟女の領域になっていた。
本当にイイ女だったw
シーズン2があるとするなら、また出てきて欲しいです!w
そんなわけで(どんなわけか知らないがw)、『運命の7秒』はNetflixにて配信中ですのでぜひ観てください!